ふたつの未来の行方。
Cait Sith : ここまでよ、リリス……
Lilith Ascendant : ……
…………クッ……
Cait Sith : !ふらふらになりながら、冒険者とケットシーの目の前から姿を消すレディリリス
Cait Sith : 追いますわよ、
Roard!Lilith Ascendant : …………
……わたくしが……こんな……
Lilith Ascendant : 女神……なんかに……
Lady Lilith : いやよ……
負けたく……ない……レディリリスはそう遠くへは行っていなかった
もう戦う力も残っていないのにあがこうとする姿は、まるでかつての彼女の…
Lilisette : Roardッ……!!が、その時レディリリスの内側から冒険者を呼ぶ強い声が聞こえ
元の姿を保てなくなったレディリリスは、白と黒の羽根になって四散してしまう
頭上のアトモスがそれをゆっくりと吸い込み始める…
Cait Sith : あぁっ……!!
Cait Sith : アトモスが……
ふたりの記憶を食べ始めた……
Cait Sith : 黒き未来を喰い尽くせば……
アトモスは静止して、
あちらの未来は消滅するはず……
Cait Sith : でも……リリゼット……成り行きを見ていることしか出来ず、呆然とするケットシー
しかし事態は思わぬ方向に
Cait Sith : ……?
Cait Sith : おかしいわ……
アトモスが止まらない……?
Cait Sith : !!隣にいた冒険者の姿を見て驚くケットシー
アトモスは冒険者という白き未来をも食おうとしていた
冒険者の姿がどんどん透けていく…
Cait Sith : いけませんわっ!!
Cait Sith : アトモス、
このコは食べちゃダメよン!
Cait Sith : ど、どうして……!?
Cavernous Maw : 全テ ノ 時 ハ……
等シク アル……
Cavernous Maw : 片翼 ノ 理 ガ
崩レレ バ
モウ 片翼 モ 存在 デキ ヌ……
Cavernous Maw : 天秤 自体 ガ
消滅 スル……
Cavernous Maw : 未来 モ 同ジ コト……
Cait Sith : そんな……白き未来も黒き未来も、両方存在しなければならない未来
黒き未来を食い尽くせば、同時に白き未来も消滅してしまうのだとアトモスは言う
片方の未来を奪い合おうなど始めから無理な話だったのだ
Cavernous Maw : ユォ……オオオ……
Cait Sith : ア、アトモス……!?
Cait Sith : いけない……
オーバーロードを起こしている……!?
Cait Sith : ……!!
アルタナさまと……闇の神の
記憶を……食べてしまったから……!?暴走を起こし、アトモスが吸い込んだ未来が、時間が吐き出されていく…
Cait Sith : ……
ああ……
Cait Sith : 還っていくわ……
すべての時間が……すべての世界に……それはリリゼットのいた舞踏団のところへ、あるいは黒き未来のどこかへ…
Lady Lilith : …………
フン……忌々しい子……
Lady Lilith : 結局……
あなたたちの想いを果たしたってわけね……
Lilisette : ねえ、リリス……。
アトモスを静止させて、
ふたつの未来の干渉を止めるには……
どうしたらいいの……?
Lilisette : このままじゃ
世界が、壊れてしまうわ……。
Lady Lilith : 望むところよ……
壊れてしまえばいいわ、こんなロクでもない世界……
Lilisette : それじゃあ、
貴女の未来のみんなも、壊れてしまうでしょう……?
わたしも、それは嫌だわ……
Lilisette : どちらの未来も、
このまま繋がっていってほしい……
わたしは、今は、そう思うの……
Lady Lilith : …………
Lady Lilith : ……扉を、閉じるのよ……
Lilisette : 扉……? アトモスを……?
どうやって……?
Lady Lilith : それぞれの世界から
干渉しあわないように、扉を閉じるの。
それぞれの、未来から……
Lilisette : じゃあ、貴女の未来と
わたしたちの未来で……
Lady Lilith : …………げほッ
ごほ、ごほッ…………
Lady Lilith : …………
わたくしは、もうダメよ……
このザマだもの……
Lady Lilith : ……あなた……
わたくしたちの未来に行って……
アトモスを閉じなさい。
Lilisette : ……?
Lady Lilith : うッ……
げほっ、ごほッ……!!一度は不死の体を得たとはいえ、力を使い果たしたレディリリスにもう時間は残されていないようだった
苦しそうに咳き込むレディリリスに、思わず駆け寄るリリゼットだったが…
Lady Lilith : 察しが悪い子ね……
あなたが、新しいレディ・リリスになるのよ。
Lilisette : ……!?
Lady Lilith : 良く聞きなさい……
Lady Lilith : この、わたくしが
アンタごときにお願いするのは最初で最後よ。
Lady Lilith : 行って、
過去への干渉をやめ……扉を閉じるの。
Lady Lilith : そして……
新たなレディ・リリスとして
あちらの未来の皆を……
Lady Lilith : 導いてちょうだい……
Lilisette : ……
Lilisette : それしかないのね……?
Lilisette : ……わかった。
やるわ、わたし……。
Lady Lilith : あなた……
強くて大人で美しい
わたくしが羨ましいと言ってたわね。
Lilisette : ……ええ。
Lady Lilith : わたくしも、あなたが……
少し、羨ましかったわ……。
Lady Lilith : 天真爛漫で、無邪気で
力を貸してくれる友達がいて……
Lady Lilith : わたくしにも、
そんな時代があった……
Lady Lilith : 行きなさい。リリゼット。
Lady Lilith : きちんと、お別れをして、ね……
Lilisette : リリス……!
Cait Sith : リリゼット!
リリゼットッ!!
Cait Sith : 無事だったのねン
よかったわ、さあ、ここから逃げましょう……リリゼットが戻ってきたことに安堵し、この場から脱出しようとするケットシーと冒険者
しかしリリゼットは…
Lilisette : 待って……!
Lilisette : このままじゃ、
双方の未来の干渉は止まらない……
Lilisette : 扉を……閉じなくては。
Cait Sith : ……リリゼット?
Lilisette : わたし、あちらの未来に行って
アトモスを閉じるわ。
Cait Sith : ……に、にゃンですって!?
Lilisette : リリスの……もう一人のわたしの
願いも……かなえてあげたいの。
Cait Sith : ……
Lilisette : わたしたちの未来から、
アトモスを閉じるのは……
Roard、
あなたにお願いしたいの……
Lilisette : このまま、ゆるやかに
アトモスが石になるのを
見守っていて……
Lilisette : 再び、ふたつの未来が
衝突することがないように……リリゼットの強い決意に、冒険者もゆっくりと頷く
Lilisette : ありがとう、
Roard。
じゃあ、行こう。
別れの時が、来る。
【後編】に
つづく